正太郎の世界

日本を代表する時代小説の巨匠といえば、池波正太郎です。昭和初期から中期にかけて江戸を題材にした時代小説を数多く手掛けてきました。現在の地図を用いてその池波正太郎の世界を見ると、おもに東京都の千代田区から墨田区一帯を舞台にしていることが伺えます。たとえば代表作である火付け盗賊を捕える奉行を主人公にしたものであれば、深川を主な舞台にしています。深川とは現在の月島の周辺で、以前は料亭や茶屋がたくさんありました。庶民の暮らしと食文化を作品内に取り入れている池波正太郎は、城下町よりも下町周辺にスポットを当てていたのでしょう。地図を見ると小説に登場する地形や川の名前を具体的に知ることができ、イメージをふくらませやすいです。